
人魚は空に還る
「しずくは観覧車に乗りたい」富豪の夫人に売られてゆくことが決まり、最後の願いを口にした見世物小屋の人魚は、観覧車の客車から泡となって消えた。水神の怒りに触れて浅草は水中に沈んだのか。いや、地上という水底から人魚がその身を縛るもののない空へと還っていったのか──(表題作)。
心優しき雑誌記者と超絶美形の天才絵師、ふたりの青年が贈る帝都探偵物語。
----------
「僕がワトソンで君がホームズだ。さあ謎を解け」
高飛車なワトソン役と、常識人で真面目な探偵ホームズ役の二人が面白そうで読んでみましたv
期待したほど高広と礼が絡まないね…。
一緒にいて互いに依存してるっぽい雰囲気はあるのにイマイチ萌えには届かんのう。絵師と記者、探偵業でコンビ張るわけではないからなー。
お話の方はすごく真面目で隙のない感じがしました…明治の時代を調べあげました、というのが伝わってくる!
明治〜大正のお話は好きですv 特にこの「帝都」な雰囲気がたまりませんvv
路面電車も自動車も走っているのに『人魚』の見世物が大ウケしたり。賑やかさと暗さが混雑してて妙に切なくなります。
タイトルにもなってる『人魚は空に還る』。越後で人魚で蝋燭というと…な人物が出てきますね〜。
不思議なんだけど、作家に愛される作家だよね。
そしてタイトルがいちいち素敵だ…。
探偵役の高広視点で物語が進むので、謎解きシーンがちょっと駆け足すぎるのがなぁ。もったいないと思うんだけど。
「後で誰かに顛末を話す」って形式じゃないとトリックも犯人もわかんないのは…。巻末解説はそこがいいんだって褒めてるけどさー。
文体はしっかりしていて決して嫌いではない。むしろ長編を読みたいと思う。
もうちょっと、短編の軽いミステリで続くならキャラものに寄せていただいて、長編になるなら事件とトリックを大きく…って、殺人は高広の守備範囲外だからそれは無理かぁ。
各短編のキーアイテムが女性ならでは、綺麗で素敵ですねv 人魚、真珠、モネの睡蓮…。
『美しさ』へのポリシーがすごくしっかりしてるのかも。